美女で野獣
「隼人さん?」

「紗亜夜さん…!」


顔をあげると紗亜夜さんがボクを覗き込んでいた

気づくと息を切らせてボクは屋上の手すりによりかかっていた



雲になってのんびりと、ふわふわとただよっていたい
空の青さに酔いしれていたい



今は
息をするのも苦しくて
親友をにくいと思う僕の気持ちのほうが邪悪で


ボクがいなくなったって
誰も傷つかないし

誰もなかないと思う。



愛することに臆病なボクは愛されもしない



「授業、隼人さんもさぼりですか?」
「はい」

「隼人さんは頭いいですもんねー★」
「いいえ!」

「謙虚ですね!」
「…///」

紗亜夜さんペースにはまりそうだ

「孝太郎とは、どう?」
紗亜夜さんの肩がぴくりと動く
「ぇ」

「好き…なんだよね?」
「ぇあ…はい」
「ボク、そーゆーの鋭いんだよね!」


まぁ、紗亜夜さんの態度見てれば誰でも分かるか


「美女で野獣の…」


「?」
紗亜夜さんはぽつりと呟く

「私なんか眼中にもないです。だって、孝太郎さんの好きな人は、隼人さんと同じですよね」

紗亜夜さんは申し訳なさそうにうつむく


「美女で野獣って?紀奈のこと?」
「はぃ!」

「だってすごく美人で綺麗でホンット完璧なんだけど、実は野獣みたいに強くて
自由で気高くて乱暴で――――
守りたい人をちゃんと守れる。
野生の美しさ?本当に強くて美しくて

そんな人に私はなりたいです!!」


悩み1つなさそうな快晴の青空に、紗亜夜さんの笑顔がお日様みたいにキラキラと輝いた


「私もがんばるので、一緒にがんばりましょう♪」

この子…すごく強くなった
少し前まで泣いていたのに


「なんでそんなに強くなったの?」
前からずっと気になっていたことを聞いてみた


「強くなんかありません。ただ、好きな人に好きな人がいてもいいんです。」

目を少し潤ませ、ボクに訴えかけるように力強く言った


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