美女で野獣
「あ…あのさ」
紀奈は前髪をぐっとかきあげる
この男らしい仕草がボクは大好きだ
「孝太郎とかに言う?」
あ…
「うん、ボクから言っておく」
「そか、ありがとッ」
「うん」
正直、それはずっと考えてたことだった
触れたくなかった
孝太郎、怒るかな
紀奈の家からの帰り道、ボクは自動販売機で買った温かいココアを公園のブランコに乗り飲んでいた
「隼人?」
顔を見なくても分かる。いつもの声
「孝太郎」
「何しとるん?」
孝太郎は日課のジョキング中だったらしく、首から白いタオルをたらしている
ごきゅッ
孝太郎は手に持っていたミネラルウォーターの入ったペットボトルのふたをあけ、豪快にごくごく飲んでいく
「んなとこでなにしてたっちゃ?」
「たそがれてた」
ボクはひきつった笑顔で孝太郎を見た
チャンスは今しかないだろう
「孝太郎」
「ん?」
「ボクね、き奈と付き合ってるんだ」
一瞬時が止まったかのように孝太郎の表情は固まった。でもすぐに
「アハハハッ」
「孝太郎ッ?!」
孝太郎はおなかを抱えて笑い転げる
「しってたっちゃ」
「え」
「オレが情報通ってコトくらい、お前だって知ってるだろ?
いつゆってくれんだろーって待ってたんだよ」
にこっと歯を見せて笑う孝太郎
「で…も、紀奈のコト好きなんじゃないの?」
恐る恐る聞く
「ちょっとね、惹かれてたよ、でもね」
孝太郎は申し訳なさそうに地面を見ながら話す
「いいんだっちゃ!もう俺は!!
隼人のことも好きだから
2人が幸せならそれでいいっちゃ」
「孝太郎ーッ!!!」
ボクは孝太郎の胸の中に飛び込む
「うわーッ」
自分でもきもいとは思うが、今は泣き顔を見せたくなかった