美女で野獣
愛歌
「雪だあーッ」
紀奈は両腕をめいっぱい空に突き出す
「雪ですねぇッ」
空から零れ落ちてくる透明の粒にはしゃぎ始める
「どーよ」
隣に居た孝太郎が突然ぽつりと言った
「いーね、美女が2人で雪遊び」
何?独り言ですか?
「にしてもさむいっちゃ」
「あんまり見るなよッ」
ぶるっと肩を震わせる
スパンッ
「へぶッ!」
顔面にでかい雪の固まるがぶつかる
そのままよたよたと地面に崩れ落ちてしまうボク。
「おいッ隼人!
それでも男か?こおーいッ!」
やっぱり紀奈だったか
こんなことするのは紀奈しかいないもん…
僕たち以外誰もいないからってぇ~…ッ
しかもなんで雪玉の効果音がスパンッなんだッ!
意味わかんないしッ!!
「春日さん、私たちは雪だるまをつくりましょう?」
隣をちろっと見ると、しゃがんで積もった雪を丸める紗亜夜さん。
「いいっちゃねッ」
にこっと笑う孝太郎
羨ましいなあ…
ザシュッ
ぱんっ
「ひえーッ」
実はこう見えても結構痛いんだよッ
「あはははッ」
「紀奈ッ!!」
ボクは怒りながらも紀奈の無邪気な笑い顔を盗み見していた
こうしてるとなんだか本当にカレカノみたいなんだもんッ…
ずっと、一緒にいられるんだね、紀奈
「んーッ」
紀奈は空を持ち上げるかのようにぐっと手を空に突き上げた
「っはー」
「疲れた?」
「ううんッ★」
~♪ ~♪
紀奈の携帯の着信音が鳴り響く
携帯を開くと同時に紀奈の顔が曇ったのがわかった
「…。」
「紀奈…誰?」
紀奈は少し言うのを躊躇ったが
「…と…父様」
「お父様ッ?!」
「日本に帰ってきたんだ」
チッと舌を鳴らす
紀奈は携帯を、ポケットに突っ込む
「…。」