美女で野獣

愛歌



「雪だあーッ」
紀奈は両腕をめいっぱい空に突き出す

「雪ですねぇッ」
空から零れ落ちてくる透明の粒にはしゃぎ始める


「どーよ」
隣に居た孝太郎が突然ぽつりと言った
「いーね、美女が2人で雪遊び」

何?独り言ですか?


「にしてもさむいっちゃ」
「あんまり見るなよッ」
ぶるっと肩を震わせる


スパンッ

「へぶッ!」
顔面にでかい雪の固まるがぶつかる
そのままよたよたと地面に崩れ落ちてしまうボク。


「おいッ隼人!
それでも男か?こおーいッ!」

やっぱり紀奈だったか
こんなことするのは紀奈しかいないもん…



僕たち以外誰もいないからってぇ~…ッ
しかもなんで雪玉の効果音がスパンッなんだッ!
意味わかんないしッ!!


「春日さん、私たちは雪だるまをつくりましょう?」
隣をちろっと見ると、しゃがんで積もった雪を丸める紗亜夜さん。

「いいっちゃねッ」
にこっと笑う孝太郎


羨ましいなあ…


ザシュッ
ぱんっ

「ひえーッ」

実はこう見えても結構痛いんだよッ
「あはははッ」
「紀奈ッ!!」


ボクは怒りながらも紀奈の無邪気な笑い顔を盗み見していた

こうしてるとなんだか本当にカレカノみたいなんだもんッ…


ずっと、一緒にいられるんだね、紀奈


「んーッ」
紀奈は空を持ち上げるかのようにぐっと手を空に突き上げた

「っはー」
「疲れた?」
「ううんッ★」

~♪ ~♪
紀奈の携帯の着信音が鳴り響く
携帯を開くと同時に紀奈の顔が曇ったのがわかった

「…。」
「紀奈…誰?」

紀奈は少し言うのを躊躇ったが
「…と…父様」
「お父様ッ?!」

「日本に帰ってきたんだ」
チッと舌を鳴らす

紀奈は携帯を、ポケットに突っ込む
「…。」



< 56 / 76 >

この作品をシェア

pagetop