美女で野獣
紀奈…
~♪ ~♪
鳴り止むことを知らない携帯
~♪ ~♪
「…ッ」
「ごめん隼人、すぐ家に帰らなくちゃいけないみたい!」
へらっと笑うと、ボクが返事をするより前に紀奈は消えていた
紀奈…?
かちゃ
「どうした、隼人、飯くわねーの?」
「うん」
なんだか食事が喉を通らなくなってしまた
兄貴はそういってボクのエビフライをぺろりとたいらげた
「どうしたの?」
母さんが心配そうにボクを覗き込む
「…ご馳走様」
ぱちんと手を合わせ、食器を流しに運びそのまま自分の部屋まで行った
紀奈の顔が頭から離れない
ボクはおもむろにバックから携帯を取り出し{か}のボタンを2回押し、真ん中の決定ボタンを押す
そこには愛しい愛しい紀奈の名前が映し出された
「…?」
親指が震える…通話のボタンを押そうとしているのに親指はピクリとも動いてくれなくなってしまった
「…。」
深く深呼吸
わかってる。
僕は紀奈の不安な声を聞きたくないから逃げているんだ。
ぐっとありったけの力を親指に込める
―…プルルルッ
紀奈ッ紀奈ッ…
ブッ―――ピーッ
ー?
頭の中が一瞬真っ白になって、そのあと?マークがたくさん出てきた
上手く状況がつかめないけど
切られた?
シカト?
プルルルッ
負けじともう1度かける
ピーッ
着信…拒否
「んで?…なんでだよッ!」
ボクは携帯を力任せに壁に投げつけた
「はあッ…はあッ」
上手く呼吸ができない。水の中にいるみたいだ。
呼吸の仕方を忘れちゃったのかな?
目を瞑っても紀奈の笑顔が浮かんでこないよ?
何でこんなに不安なんだろう?
心臓がいつもの2倍バクバクと音を立てる。
波がどっと押し寄せてくる
「ふ…」
全身の力が抜けてボクはそのままベットに身体を預けた