*お前を抱きたい*短編

「うん、ススキさんか…」

あたしの心の叫びなんか無視して隼人がぼそぼそ呟いていた。


この時、あたしは悟った。


この人、おかしい、と。



最初はただ交わされただけだとも思ったんだけど

あれから…


「ススキさん!」(だからススキじゃねぇよ!)

「ゆずぽんー!」(名前教えた。でもなぜ、ゆずぽん?)


と嬉しそうに話かけてくるあたりから、それは違うんじゃないかと思い始めていた。



告白の日から仲良くなったあたし達は……


ある日2人で映画を見に行った。

(確か隼人希望の某アニメだった気がする、つまらなくて、途中で寝たけど。)


ーその日の帰り道ー



「ゆず…(やっとまともな呼び名)」


「ん?何」


「キス、したい」


「へぇ~………。って、はあ?!」


驚いて隼人を見上げた。

冗談かと思った。

だけど

隼人は真剣な顔をしていて…。


あたしは大好きな隼人の

その瞳

その声に


胸がどき、どき…ときめいた。



聞きたい事はいっぱいあった。

(あたしの事、好き?)


(いまだに、あたしの名字はススキだって思ってるよね?)


とか。


だけど…


言葉なんて、出なかった。

嬉しくて、

嬉しくて…。


あたしは小さく頷いた。
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