先生と私のたった一度の恋

9

先生は、壁に寄りかかってワインに口をつけていた。

そんな仕草にまで、私はドキッとしていた。
そんな私の様子に気がついたのか紫庵さんが、私にワインのボトルを渡してきた。


「仁也様に注いで差し上げて下さい。」


そう言って、紫庵さんは微笑んで去って行った。
私は勇気を出して先生に近づいて行った。



「先生!!わ、ワイン。いりますか?」



ちょっとびくびくしながら尋ねると、先生は“先生”の顔をしていた。


それは、仮面。
その下に隠された表情を見ることは、
私には許されないのかな?

「お!サンキュー。」

そう言って先生は私の頭を撫でてくれた。


ついさっきまではこの行為も、嬉しかった。
でも、今は苦しいよ…先生…



『儚…俺は…』


あの時、先生は何て言おうと思ってたの?





< 27 / 37 >

この作品をシェア

pagetop