NOEL(ノエル)
――パリンッ
スタッフルームのガラスにも小さな亀裂が入る。
「あらあら。これは大変。
観客の誰かが興奮し過ぎて悪さをしたみたいね。」
「悪さって、何だよ?!」
「私達アニマル・ミュータントの中には、生まれつきサイコキネシスを持つ者も存在するの。
それは、普段はチップによって抑制されているけれど、今日みたいに性的興奮によって制御不能になった時、自分の意志とは関係無く発動されてしまう場合もあるのよ。」
言いながら、ベラはインカムのボタンを押しステージのスタッフに向かって指示を出す。
「誰か、セシルの歌を止めて頂戴。
このままじゃ、ケガ人が出るわ。」
ベラの指示を受け、ステージの動きがパタリと止まる。
不意に音が無くなったのに気づいたセシルは、不服そうにマイクをくるくると回しながら、ベラの居るスタッフルームを見上げた。
その時、客席から堰を切ったように観客の声が溢れ出す。