NOEL(ノエル)
ψ8. ベラの目論見
ψ8. ベラの目論見
NANO政府公安局の取調室。
トントンとペンの先で神経質そうにデスクを叩く若き局長、フィン・クレイドは、目の前に座る大柄の女性の左腕を見ながらイライラした声を出す。
「もうこれ以上、あなた達を見逃しておくわけにはいきませんよ、ベラ・キャンドル。」
ベラは左腕に残る茶色い剛毛を右の掌で摩りながら、上目遣いにフィンの顔を覗き込む。
「あ~ら、フィン
そんなに眉間にしわ寄せたら、いいオトコが台無しだわよ?」
「そうさせてるのはアナタですよ?ベラ。
今回のシークレット・ライヴの被害がどんなに大きかったか、アナタは分かっているのですか?」
ベラは不敵な笑みを浮かべながら言葉を繋ぐ。
「被害ですって?
セシルの歌を聴いたファンがトリップ状態になった。
ある者は暴れ、ある者は快楽に浸り、またある者は会場を壊した。
場内は騒然となり、怪我人が出て、何人かのファンは病院に搬送された・・・
でも・・・それが何か?
会場は私の造ったもの。
彼らは熱狂的なセシルのファン。
公安が目くじらを立てる理由があって?」