NOEL(ノエル)

「何?
悩める少年のふりでもしてるワケ?」

入り口に立つセシルは、ふっと笑ってアルベルトに冷ややかな一瞥をくれると

「食事・・・だってさ。」

そう言い残してその場を立ち去ろうとする。

「待てよ。」

アルベルトはセシルに駆け寄るとその腕を取った。

「君は何故、イレイズを名乗るんだ?
その姓は、誰から受けた?!」

セシルは掴んだアルベルトの手をそっと離すと、

「あ~あ、頭でっかちのお坊ちゃまは何も知らないんだね。」

そう言ってククっと嘲るように喉を鳴らす。

「僕達アンドロイドは、その名前も記憶も全て最初からインプットされてるんだよ?

それ以外の事は、僕達には知る術も権利も無い。」

「そう・・・か。」

「ただ・・・」

セシルは挑発するような目つきでアルベルトを見上げた。

「ニコルの事は知ってたよ。
あなたが彼女を知る、ずーっと前から・・・ね。」

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