NOEL(ノエル)
ユーロの研究室の窓からは、NANO CITYには無い筈の“風“が流れ込む。
Farmの空調の為に作られた風は、溢れる作物と養土の匂いを巻き上げ上空へと運ぶ。
ニコルは窓に駆け寄り、キャスケットを脱いで大きく息を吸い込んだ。
「やっぱ、ここは気持ちがいいなー。」
ふわりと零れ落ちたニコルの真直ぐなシルバーオレンジの髪が、風を受けてキラキラとなびく。
「お嬢ちゃんは昔っからここが好きだからな。」
ガイは大きなリネンのソファに腰を下ろすと、シュっと煙草に火を点けた。
「ガイ、その呼び方、いい加減やめてくれ。」
ニコルは即座にくるりと振り返ると、ガイに人差し指を突き出した。
「あぁ?
俺にとっちゃ、お前は今でもお嬢ちゃんに違いないがな。
そうやって髪を下ろすと、あの頃のまんまだ。
もっとも、う~んといい女に成長してはいるが?」
ガイは、ニコルの膝上まである編み上げ靴の爪先から上へと、その視線を掬い上げるように滑らせる。