NOEL(ノエル)

セシルはエミリアから目を逸らさずにステージへと駆け上がった。

「ねぇお姉さん、僕も歌っていい?」

エミリアは瞬時に顔を曇らせる。

「ちょっとベラ、今最期のリハーサル中なのよ。
どういう事?!」

客席にいるベラは、穏やかに微笑んで立ち上がった。

「悪いわねぇ、エミリア。
一曲でいいからその子に歌わせてやってくれるかしら?

お願い。アタシ興味があるのよ、その子に。」

エミリアはプイと顔を背けると、ヘッドマイクを無造作に外してセシルへ向かって放り投げた。

「どうぞお好きに。」

セシルはそれを拾い上げると「サンキュ。」と一言だけエミリアに告げ、軽やかにステージ中央の階段を駆け上がっていった。


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