NOEL(ノエル)
ゼオはモニターから目を離すと、エレナに向き直って口調を強めた。
「お前は、研究を続けていればよい。」
「それが・・・契約だから?」
「そうだ。」
エレナは唇を噛んでゼオを見上げる。
「確かに17年前、私はあなたと契約をしたわ。
あなたの子供を生む代わりに、あなたからその後の研究費用の全てを援助してもらう・・・」
「そうだ。
そして、私はその時こうも言った筈だ。
子供の養育は必要無い。
その代わり、必ず研究の成果を上げる事・・・と。」
「ええ。
だから、契約通り私はあなたの跡継ぎを生み、自分の研究を続けたわ。
あの頃はまだ、あなたの真意がどこにあるのか、私には分からなかったから・・・。」
エレナはそう言って視線を逸らした。
「ああ。確かにお前はよくやってくれた。
私の期待通り、いや、それ以上に・・・」
ゼオは表情を崩しエレナの頬を優しく撫でると、その顎をそっと持ち上げる。
「お前は、私がいちばん欲しかったモノを創ってくれた。」
「サンプルα・・・セシルね。」
エレナはそう呟いてその体を背けた。