NOEL(ノエル)

「寒くなんかない。」

ニコルは、目深に被ったキャスケットのツバの下から、隣りの男を睨みつけた。

「まぁまぁ、そんなにピリピリするなよ、ニコ。 
今日はあのエロじじぃの代わりに来たんだろ? 

初めてだもんなぁ、まぁ誰だって嫌なもんよ。
返品に立ち会うのなんかさ。」

やや小太りのカーペンターパンツの男、ユーロ・ブラスカが、端から覗き込んで気さくな声を投げる。

「エロじじぃって言うな!
爺ちゃんの造るオンナ達が上の男どもに受けがいいのは、爺ちゃんの腕がいいだけさ。

大体、返品なんて聞いてあきれる。 
大方オンナの扱い方も知らないクソ野朗がビビッて手放しちまったってのがオチさ。」

「まぁ、だといいんですがね。」
 
少し離れたところに立つ背の高い色白の男、フィン・クレイドは、その銀縁の眼鏡を上げながら言った。

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