NOEL(ノエル)
「今や、フェイクはホンモノよりお高いの。
何故なら、ホンモノ以上のクオリティを持ったフェイクが現れたから。」
「何だよそれ?」
「その先はアタシが話すよ?ビル。」
ジェニファーは二人に椅子を勧めると、自分もふわりとアームチェアーに腰掛けて、ゆっくりと話し始めた。
「始まりは、今から17年前。
政府が『ニセモノ狩り』を始めた頃から。」
「ニセモノ狩り?」
アルベルトは聞きなれない言葉に眉を寄せる。
「そ。
その頃はまだ今みたいにNANO CITY との貿易が厳しく規制されてなくってね、VINOの人達は内緒でNANOからフェイク品を買ってたの。
政府に公に承認されてる、エネルギーや食品以外にもね。
だって、無理もないよね?
もともと、地殻変動の生き残りであるアタシ達には、ホンモノなんて、そうそう手に入るものじゃない。
鉱物も、植物も、生き物さえも、その絶対数は限られてる。
だから、ニセモノが買われるのは、むしろ必然だったんだよ。」