幕末咲乱華
老人「婆さんや、こんなにしっかりしている子を見た事があるか?沢山の辛い思いをして此処まで来た事、本当に大したもんだと思う。
どうだ?若い者と生涯共にするのは。」


老婆「賛成ですよ!こんな可愛らしい孫が欲しかったんですもの!」



老夫婦は優しい眼差しを姉妹に向けた。



桜子「え?じゃあ…」


老人「一緒に暮らそう!」



どんなにこの言葉を待っていただろう―――

やっと、あの地獄の様な場所と旅から解放された―――!



桜子「お爺ちゃん、お婆ちゃん・・…ぅ゛う゛……ありがとう!!」



嬉しくて涙が溢れた。

拭っても拭っても止まらない。


まるで、旅の途中で降り続いていた雨の様に―――



老婆「あ〜、ほれほれ!泣くと、こんなに可愛らしい顔がみっともなくなっちゃうよ?」



ふふふと笑いながら、自分の袖で桜子の涙を拭いた。


そして、『老夫婦にお礼を言いなさい!』と"おしの"に言おうとして見ると、既に夢の世界へ旅立っていた。


老婆は、¨あらあら¨とクスクス笑いながら、あらかじめ敷いてあった布団に寝かした。





それから、この優しい老夫婦との生活が始まった。





老夫婦の家は、村から少しだけ離れた所に作られていた。

だが、山が近いので、木を拾って来たりするのには楽だった。



毎日、老夫婦の手伝いをし、お腹一杯のご飯を食べ、ぐっすりと眠った。





本当に幸せだった。

4人家族で過ごしていた、あの時の様に―――





しかし、この幸せは長くは続かなかった。
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