恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
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体育館の壁の大時計の針が、あとちょっとで12時30分を指し示そうとしたとき……、
「ハァーイ、みんなメシにするよ、メシぃ」
ウチの高校の女子バレー部主将・3年生のあゆみセンパイのひと声で、ようやく午前中の練習が終わった。
「お疲れサマですっ。お疲れサマですっ」
あたしは汗ビッショリのセンパイ方へ、ひとりひとりタオルを配って歩く。もちろんどれが誰のタオルだか熟知してるから、まちがって他のヒトのを渡すことなんてない。
……って、あたしのやってること、なんかマネージャーみたいだけど、断じてあたしはマネージャーじゃない。
この春、入部したばかりの1年生だけど、れっきとした選手……のつもり。まだ一度も試合なんてしたことないけど……。
「わんこ、サンキュ。タオル配り終わったら、なんか冷たいモノ買ってきて?」
「ハイ、真澄センパイっ。飲み物、なにがいいですかっ?」