恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
そんなある日の夜、おフロから上がって、部屋でミュウトにメールをしていると……、
コン、コン…
……と不意にドアがノックされた。
「一子、勉強中すまないがちょっといいか?」
ドアの向こうから聞こえてきたのは父の声だった。
「いいよ」
いちお、机の上には教科書を開いてはいたけど、勉強なんかしていなかったあたしは、慌ててパタンとケータイを閉じると、ソレを机の隅っこに置いた。
ガチャっとドアを開けて父が部屋に入ってくる。いま仕事から帰ってきたばかりみたいで、まだスーツ姿のままだった。
「なに? 父さん」
「あ、あぁ……」
なんだか言いにくそうにしている父。
年頃の娘としては、なんかウザイ。
「悪いけど、宿題まだ残ってるし、用があるなら早く言ってくれないかな?」
ウソだ。