恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
「この子、父親の仕事のカンケーで、この春、地方の学校から東京に転校してきたんだが、なかなか友達が出来なくてひとりぼっちだったから、サイコーの友達が出来たって言って大喜びしてるんだそうだ。おまけにそのことがきっかけになって、ねこ好きのニンゲンの友達まで出来たんだそうだぜ」

「よかったね~♪ ミュウトのおかげで茶トラも、そしてその男のコも幸せになったんだね~♪♪」


彼のおかげで、本当だったらどこかでおなかをすかせたあげくにのたれ死ぬか、それか保健所で処分されるかもしれなかった捨てねこたんが救われ、そんでひとりぼっちの淋しい男のコが笑顔を取り戻したのかと思うと、あたしまで嬉しくなってしまう。

そして彼のやってることが、本当に意義のあることだって……もしかしたら世の中の役に立ってることなんじゃないかとさえ、本気で思ってしまう。

このヒト、クチは悪いけど、ヤッパ本当はいいひとなんだってあらためて思う。


「こーいう写メ送ってもらうと、オレも苦労して里親探しをした甲斐があるってもんだ」

そう言って、目を細める彼の顔は、何かを成し遂げたヒトだけが見せる満足げな微笑みに満ち溢れていた。

「今夜あたり、その後、どうなったかアフターケアもかねて、その子ンちにまた電話してみっかな」

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