恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
なんで? こないだは、あんなに強引に抱き寄せて乱暴にキスしようとしたのに……。
「おい、一子、キスさせろよ、キス。キスさせろ、っつってんだよっ」
あのときのミュウトの声は、今だってハッキリあたしの耳に残ってるよ。
なのに、なんで? ねぇ、なんでなの?
もしかして、あのときあたしが「イヤ」って言ったから……だから、キモチがスッカリ冷めちゃって、もうキスなんかする気が全然なくなったってコト?
やっぱあたしは「イヤ」って言っちゃいけなかったんだ。ヒトに何かを頼まれたらゼッタイ「イヤ」って言っちゃいけなかったんだ。
もし、あのとき「イヤ」って言わなかったら、こんなことにはならなかったのかも……。
でも、これはあたしが勝手に思ってるコト。
ミュウトがどう思ってるのかは分からない。
そもそも……オンナに生まれたあたしには、男のヒトのキモチは分からない。
まして、ねこの目のようにコロコロ変わるミュトのキモチなんて、もしかしたらどう頑張っても分からないのかもしれない――――