恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
……と、突然、不意に……、
「よっ! わんこちゃん♪」
JR新宿駅の改札を出たところで、若い男のヒトの声がかけられた。
「え…!?」
何げに声のしたほうを見ると、大勢のヒトたちであふれる土曜日の駅構内にあって、頭ひとつ……いや頭ふたつぶんくらい飛び出している背の高い男のヒトの姿がそこにあった。
ウチの高校の男子バレー部の名アタッカー・井川センパイだった。
その実力は新入生として入部したときから際立っていて、3年生となった今、卒業後はプロとして活躍することを誰もが信じて疑わないほどのもので、実際、数社のスカウトマンからすでにハナシもきているらしい。
おまけに背が高くて、なかなかのイケメンっぷりだから、去年“全国高等学校・春季バレーボール選手権大会”で注目されてからは、マスコミから“ノッポ王子”なんて呼ばれるようになって、今や一躍、時の人だった。