恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~

大きく左右に手を振ってバイクを呼び止めるあたし。

郵便配達のヒトなら、このあたりの住所のことにも詳しいだろうと思ったからだ。

「ハイ、なんやろ?」

暑い中、毎日郵便配達をしているせいか、配達のおじさんの肌は日に焼けて真っ黒になっていて、頭にかぶった真っ白なヘルメットが、モノトーンの対照的なコントラストで、その黒さをよりいっそう際立たせていた。

「あのぅ、この辺りに『ミュウ』っていう“猫カフェ”があると思うんですけど、もし場所を知ってたら教えてもらえませんか?」



「あぁ、猫カフェなら、もうあれへんでなも」



親切そうなおじさんの言葉が、残酷にあたしのココロを引き裂いた。


「えーっ! な、ないんですかーっ!?」


あり得ないし。


「そこに駐車場があるやろ? あそこに建ってたんやけどね」

「そ、そうだったんですか……やっぱりカーナビの道案内は間違ってなかったんだ……」
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