恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~

言われてみれば、そのコインパーキングは全体的に真新しく、まだ出来たばかりという感じだった。

「まぁ、わっちはポストに郵便物を配達するだけで、猫カフェのご主人とも話したことがにゃーから詳しいことは知らにゃーが……なんでもノラネコにエサをやった、やらんとかでご近所トラブルがあったみてぇでなも、それで夜逃げか蒸発でもしたんやろうけど、わっちにはよく分からにゃーんだてよ」

「なァんだ……せっかくミュウトに逢えると思ったのに……」

楽しみにしていたぶん落胆も大きくて、そう言ったっきり、あたしは言葉を失ってしまって、「じゃあ、わっちはこれで」と去っていく配達のおじさんに「ありがとう」も言えずに、ただ頭を下げることしかできなかった。


クルマに戻って、倒れ込むようにして後部座席のシートにもたれかかるあたしを見て、父が不憫に思ったんだろう。

近所のヒトに“猫カフェを営ってたヒトが、その後どこに引っ越したか知らないか?”と、さんざん尋ね回ってくれたんだけど、その後の消息を知っているヒトは誰ひとりとしていなかったという。

そして、その誰もがクチを揃えるようにして言ったらしいのが……、

「気がついたら店がなくなっていた」

……という言葉で、いつ閉店になったのかハッキリ知っているヒトは誰もいないんだ。

< 184 / 205 >

この作品をシェア

pagetop