恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
「す、すまないっ。ねこが急に飛び出してきたんだっ。ひいたかもしれないっ……」

顔面蒼白の父。

クルマから飛び降りて、フロントのほうへ回るあたし。


恐る恐るクルマの下を覗き込む。

だけど、そこにねこたんの姿は見えない。

「いないよ、父さんっ」

「いや、たしかにいた。黒いねこだ。すごく小さな」

「黒いねこ……? すごく小さな……」



みゃあ……



そのとき蚊の鳴くような小さな声で、でも間違いなくねこたんの鳴き声が聞こえてきた。クルマの下からだ。

「どこ? どこにいるの、ねこたん」


みゃあ……みゃあ……


耳をすまし、目を凝らして、クルマの下に向けた視線をゆっくりと動かしていくあたし。


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