恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
第2章「ざわつくココロ」
今日は、とある映画の“初日舞台あいさつ”がある日だった。

だから昨夜のうちに、女子バレー部・主将のあゆみセンパイに“今日の部活は家の用事で休む”って連絡したつもりなのに、ヒトに頼まれると「イヤ」って言えないあたしは、センパイにいいように言いくるめられて、結局、部活を休むことができなかった。

だからほんの何分か前までは、楽しみにしていた舞台あいさつを、部活のせいで見に行けなかったことを心底くやしく思っていた。


だけど大好きな井川センパイに「映画に付き合う」って言われたとたん、今日は部活に出てよかったと思った♪

だって部活を休んで舞台あいさつを見に行ってたら、駅でセンパイと出会うことも100%なかったはずだから♪♪



映画がはじまってだいたい30分後……、


となりの席で映画を見ていたはずの井川センパイのカラダが、だんだんとあたしのカラダにもたれかかってきて、ほどなくセンパイの頭があたしの肩の上に完全に着陸した。


「せ、センパイっ!!」

…って思わず大声を上げそうになっちゃうけど、映画館のマナーを熟知しているあたしは、ノドの奥まで出てきそうになっていたソノ声を必死の思いで押し殺した。
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