恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~


「だって、あなた、さっき自分であたしのこと……“シッポのはえてねぇ、おおねこ”……って言ったじゃん♪」


「…って、お前……あのなァ」

彼がここまで言ったとき、あたしはその言葉をさえぎって言った。彼に言い返すスキを与えないためだ。

「あたし、この耳でハッキリ聞いたよっ。言ったよねっ? 言った、言ったっ。100%ゼッタイ言ったよっ。あたし、聞き間違いとかしてないし、ゼッタイ言ったよっ」

早口でイッキにまくし立てるように言うあたし。

「あぁ……たしかに言ったが……」

わずかにだけど、でも彼がたじろいでいるみたいに見える。


「ね? 言ったよね? だったら、あたしのこと助けてよ。お願い、ねこが好きなら、あたしのこと、助けてほしいニャン♪」

“押しの一手”で彼のキモチに揺さぶりをかけるために、あたしは生まれてはじめて男のヒトに対して媚(こび)を含んだ甘ったるい声というものを出してみた。

これがいわゆる“ネコナデ声”ってヤツなのかニャン?


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