あたしの好きな人【短編と名乗っていい頁数かな?】
ざわめいている校舎を通り抜けて、あたしは靴箱に向かった。


いつもならテニス部の部活があるから、こんな時間には帰ったりしないけど。


今日から定期テスト1週間前だから部活動は禁止。


体を動かすのが好きなあたしには、ちょっとつまんない。


しょうがないし、駅向こうのクレープ食べたら帰ろっかな。


なんて考えながら校門に向かっていたあたしの視界に、学校っていう空間にあまりにも似合わない人物が入り込んできた。


ダークブラウンのスーツを長身にイヤミなぐらいカッコ良くまとって、中折れ帽にサングラス。


これで葉巻を吸っていない方がおかしくない?


メンズのファッション雑誌から抜け出してきたみたいなその人物は随分前からそこに立っていたらしくて、かなり前に教室を出た筈のクラスメートが遠巻きにして見つめているのが目の端に映った。


んもうっ!


こんなトコロで無駄に目立たないでよね。
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