エリートなあなた2
踏み出した時
信愛……、そんな目に見えないモノが果たして見つかるのだろうか。
いや、……根底で人を信じきれずにいる俺には到底ムリな話だろう。
* * *
「えぇ、分かりました。後ほど担当者とともにお伺いいたします」
先方の意見が腑に落ちないまま、惰性で終話ボタンを押して通話を終える。
受話器を電話機へ沈めたところで、騒がしい周囲を一瞥してデスクへ視線を落とした。
たとえサンプル品は完成していようとも、量産に移るまで大詰めの状況で甘えなど許されない。
だが、こちらの意見に聞く耳持たずなところは如何なものだろう……?
理性とは裏腹に理解しては貰えないもどかしさが募り、思わず溜め息をつきたくなった。
デスクに膨大な山と化した書類に目を通していると、ミーティングルームのドアがバンと勢いよく開いた。
ガヤガヤと騒がしいフロアに一層、バタバタと大きな足音を響かせて来る人物を捉えた。