エリートなあなた2


いくつかポテトを食べておしぼりで手についた油分を拭くと、その様子をじーっと観察していた俺へ眼差しが向いた。


「――で、続きだけど」

吉川さんのことを話し始めると、先ほどと同様に態度は一変した。



「真帆ちゃんってね、言われたことは何でも卒なくこなすのよ。
今までに見たことないほど、頭抜けて賢い子だと思うけどね、本人にやる気が見られないのよね。
何ていうの自発性?……うーん、瞳にやる気の色がないっていうか?

まあこれは、あくまで私の予想だけどね。きっと希望職種と畑違いの秘書課へ配置されたせいだと思うんだよねぇ。
仕方なく……ううん、それこそ惰性で仕事してるって感じでさ?
このままだといつ辞めるか分からないから、ちょっと心配でね」

今まで胸に積もり積もったものを話し終えると、強硬姿勢はなりを潜めた絵美さん。


「でもさぁ、先輩の私が“この仕事嫌?”とか聞いたら、それこそ後輩イビリみたいでしょ?
それで答えが違ったりでもしたら、彼女の気力まで余計に削ぐこと間違いないし!
――で、修平。アンタならどうするべきだと思う?」

あれほど手放さなかったビール・ジョッキはテーブルへ置き、その隣へ顔を突っ伏している。


どうやら期待の新人の様子には、さすがの彼女も頭を悩ませているらしい――


「…分かりました。俺が探りを入れてみます」

この時は単純に、会社と先輩のためになるのならと軽く引き受けていた。


だが、ここを機として俺自身が一歩を踏み出せていたんだ……。


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