エリートなあなた2
「いや、本社で働くのは最高の経験になると分かっているんだ、黒岩くんにとって最大のチャンスだと思う。
だが、本心を言わせて貰うと――黒岩くんが抜けるとなれば、支社には非常に痛手だよ。
正直な話、君の活躍で今の試作部が回っているのは誰の目にも明らかだからね」
「――なぜ、私なのでしょうか?」
……単純にそれが聞きたい。どうして俺なんかが本社へ呼ばれたのかと。
「それを聞くかい?――ウチへ入社以降、どれだけ製品開発をしてヒットさせた?」
ニヤリと口角を上げて笑った彼に、今はとても返す言葉が見つからない。
「――私たちが君を欲しているように、君の能力は本社に必要だそうだ」
「……買い被りすぎですよ」
「こういう時でないと君を苛められんからな」
そう言って、横目でチラリと俺の様子を窺ってくる彼に思わず、フッと頬が緩んでいた。