エリートなあなた2
彼の部屋を出ると静かな役員室を廊下ひとりで歩き、静寂へ小さな溜め息を吐き出す。
本社召集の話はどこか現実味がなく、正直言って今の状況では気が進まない。
何より、日本支社は昔の俺でも必要としてくれたから……、腰を据えて仕事に一直線の日々を送れたのだと思う。
『とりあえず気にせず行って来い』
部屋を退出する時にかけられた部長の言葉は本心を見抜いていて、さすがにギクリとさせられたが……。
到着したエレベーターへ乗り込んでボタンを押しかけた時、ふと脳裏を過ぎった数日前の相談内容。
気づけば人差し指は日常へ戻る20階ではなく、仕事で立ち寄る程度の23階を押していた。