エリートなあなた2
滞在時間ごく僅かな一階下で停止したエレベーターを降りると、向かった先はエレベーターすぐの場所。
そう。なぜだか俺の足は勝手に、プレートに秘書課と記されたドアの前へと歩いてきてしまったのだ。
トントン、とノックをすれば「はい」とドアの向こうから聞こえた声で安堵して扉を開く。
その先には電話中だったりPCと向かい合う数名を捉え、こちらに気づいた女性と軽い会釈をした。
あまりの静けさに包まれていた役員フロアから戻ると、作業音はやはり心地良く思えてしまう。
奥から真っ先にこちらへやって来た女性は、メモを取りながら歩いて来るという効率の良さだ。
「どうしたの?」
「すみません、いま時間よろしいですか?」
ここは職場――もちろん穏やかかつ、にこやかに対峙するのは当然のこと。