エリートなあなた2
人には常に優しくありたい。だが俺は、足を踏み入れることに今なお怖気づいているのだから。
結局、吉川さんをフォローする糸口をつかめないまま、双方の携帯電話が鳴り始めて話は終わってしまった……。
その2日後――営業部の部長と打合せが入っていた俺は、営業部内の小会議室に来ていた。
甲高い声の若い女性社員に案内を受け、営業部のフロア奥へ進む。部屋には誰もおらず、営業部のフロアの騒がしさと無縁な静けさに包まれた。
椅子へ深く腰を下ろすと、ある物がないことに気づく。それは伊藤部長へ預けたままの報告書類だ。
今日の営業部長との打合せには欠かせない。論より証拠を求める方ゆえなおさらだ。
ただし、午前中から会議が入っており、部長は一日部長室を不在にしていた。