エリートなあなた2


「こ、こんにちは。……お疲れ様です」

「――中に入らないの?」

ドアノブを手に部屋へ入らずに固まったものだから、思わずクスリと一笑して閉めるように促した。


パタン、とようやくドアは静かに閉めたあとテーブル付近まで歩いて来た彼女。


そして手に持った大きな書類を抱えながら、おそるおそる見上げてくる。



「何度が秘書課では会ってるよね?――俺は試作部の黒岩です、よろしく」

「あ、私は吉川です。よ……、よろしくお願いいたします」

簡単に自己紹介すると、小さく頭を下げる姿が遠慮がちでまた笑ってしまった。



彼女の姿を間近で見たのは初めて。一般女性の平均的身長に秘書課スーツを着た、華奢な女性だと率直に感じた。


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