エリートなあなた2


――あの頃の俺は何に目標を見い出して生きれば良いのか分からず、もはや諦めの境地だった。


またそこで彼女の望む言葉をのみ込んだ。それは言うべき必要のないものだったからである。



「たださ、事情はどうあれ、……人には必ずチャンスは訪れるってことかな」


「チャンス、ですか?」

しっかり俺の目を見ながら、反芻して続きを求めるので小さく笑って頷いた。



「さっき俺が尋ねた答えが見えるまでは、……目の前のものをこなすべきだと思うよ。
今は分からなくて良いから、目の前のものにぶつかっていく姿勢こそ一番大事!
そこで得られるモノは必ず、いつか役立つ時が来る――と、経験者は語ってみたりね」

じつのところ、俺が経験者だなんて大層なことを言えるような人間ではない。


ただ諦めて下を向いている彼女に、何かのキッカケをもたらす“誰か”が必要に感じたのだ。



「は、……は、い。あの、ありがとう、ございます」

そう言えるなら彼女は大丈夫だ――腕時計へ目を向けると、“あ、そろそろ時間だ。付き合ってくれてありがとう”と話を終えた。


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