エリートなあなた2
疲れの色を覗かせている部長がソファへ背を預けたところで、その向かいに落ち着いた。
「どうした?黒岩くんが珍しいな」
「すみません、お時間頂戴して」
「いやいや。それで話というのは?」
「――実は、……本社行きはお断りさせていただく所存にあります」
中途半端に時間をかけるより、単刀直入に自分の意思を話すつもりでいた。
「ど、どうした?――私が先日、」
「いえ、部長のせいでは決してありません。
私自身が支社でやりたいことを放ってまで行きたくないのです。
日本支社の試作部の未来像が浮かび上がりかけの中で、……正直いま離れると後悔します」
目を見開いた彼の牽制を受けるつもりはない。ただ湧き出る本音を吐露しただけだと。
言いきったところでシンと静寂に包まれる。ただ、固い表情を見せる部長からは目を逸らさずにいた。