エリートなあなた2
エレベーターが到着したのは8階の営業部。2人で試作部以上に騒がしい部署のフロアを通り抜けて小会議室へと到着。
一度ドアの前で立ち止まると伊藤部長と顔を見合わせた。どうやら担当者は、相当な怒号を浴びせられているようだ。
扉越しに届くそれはあまりに気の毒で、2人揃って小さく溜め息を吐き出したのは言うも出もない。
「じゃあ黒岩、よろしく頼むぞ」
「はい、行きましょう」
伊藤部長に肩を叩かれるとひとつ頷いてから、目の前の無機質なドアと対峙する。
そしてノックをしてから小会議室の扉を開くと、やはりお怒りの先方の攻撃にやられっ放しだったらしい。
「――恐れ入ります。これより私、黒岩がご説明申し上げますので」
仕事に生きがいを見つけ、全てを捧げつつ、これからも続く戦いの日々に終わりはない。
――ずっと、そう思いながら生きてきた。
それがまさか、ある女性との出会いによって、その瞬間から変わっていくとは……。