エリートなあなた2
ちなみに彼女の彼氏は、俺の後輩でもある男だ。……松岡はよく彼女を落とせたなと、つくづく思う。
俺にとっては目の前の女性は、障らぬ神に……でしかない。
表裏のない人間性は清々しくて付き合い易いが、女性としては絶対に見られないといった感じだ。
「――ところで一体、何の話だったんです?」
これ以上の怒りを増幅させないように、こちらが努めて冷静に尋ねた。
「あぁそうだった。うーん、実は後輩のコトでちょっとね」
絵美さんは肝心の用件を思い出したのか、即座に声のトーンが平常に戻った。
ジョッキのビールを隣でゴクゴク煽る姿は、口にはしないがオヤジだろう。
「俺が聞いても力になるかは、」
この変わり身と移り気の早さが、ある意味で魅力なのだろうか……?
「い~や!哲よりはアンタの方がよっぽどマトモだし。
いいから黙って聞いて欲しいの!」
「はぁ、」
ちなみに“哲”とは絵美さんの彼氏のことだが、今日もあっさり押し切られてしまった。
だが彼女のお陰でこの瞬間から、新たに何かが回り始めていたんだ。――俺に纏わるすべてのものも……。