エリートなあなた2


ちなみに彼女の彼氏は、俺の後輩でもある男だ。……松岡はよく彼女を落とせたなと、つくづく思う。


俺にとっては目の前の女性は、障らぬ神に……でしかない。


表裏のない人間性は清々しくて付き合い易いが、女性としては絶対に見られないといった感じだ。



「――ところで一体、何の話だったんです?」

これ以上の怒りを増幅させないように、こちらが努めて冷静に尋ねた。


「あぁそうだった。うーん、実は後輩のコトでちょっとね」

絵美さんは肝心の用件を思い出したのか、即座に声のトーンが平常に戻った。


ジョッキのビールを隣でゴクゴク煽る姿は、口にはしないがオヤジだろう。


「俺が聞いても力になるかは、」

この変わり身と移り気の早さが、ある意味で魅力なのだろうか……?


「い~や!哲よりはアンタの方がよっぽどマトモだし。
いいから黙って聞いて欲しいの!」

「はぁ、」

ちなみに“哲”とは絵美さんの彼氏のことだが、今日もあっさり押し切られてしまった。



だが彼女のお陰でこの瞬間から、新たに何かが回り始めていたんだ。――俺に纏わるすべてのものも……。


< 8 / 42 >

この作品をシェア

pagetop