あの日の空を,もう一度…
ふいに、手術中の文字が消えた。
開いたドアから、髭を生やしたジジイがゴム手を外しながら出てきた。
「あの、芽依美は…!!?」
誰より早く、愛結が聞いた。
愛結は、今まで誰よりも芽依美のために涙を流してきたと思う。
私より、
おばさんより。
家でも、ずっと泣いてたのを、私は知ってる。
そんな愛結に向かって、
医者はこう言った。
「残念ですが…今夜が峠です」
頭を…
なにか重いもので殴られたような衝撃を感じた。
おばさんは、その場で声をあげて泣いた。
愛結は、その場に座り込んで放心しているようだった。
私は…ピクリとも動かずに立ち尽くして涙を流した。
傍にいた、芽依美のお父さんも下を向いて『芽依美…』と繰り返していた。
そんな状況の中、患者の親族のこのような状態には慣れているのだろう。
髭のおっさんだけは真顔で私たちを見つめていた。
「みなさん、お気持ちはわかりますが…」
とでも言いたそうな目。
その目は、明らかに私たちを憐れんでいた。