あの日の空を,もう一度…
#03 悲劇の始まり
ここは,近くの総合病院。
芽依美は,あのあと救急車で運ばれ今も精密検査を受けている。
私たちも病院に付き添い,廊下で待機していた。
病院独特のニオイが嫌な空気を作り出す。
時刻は既に,
午後10時を回っている。
一秒一秒がとても長く感じられた。
しばらくして検査は終わり,芽依美のお母さんだけが医師に呼ばれた。
私は,愛結と手を握り合い…
芽依美の無事を祈った。
20分後。
「葵ちゃん…愛結ちゃん…
ちょっといいかしら?」
芽依美のお母さんに呼ばれ,廊下の隅に移動した。
そして,芽依美のお母さんは静かに口を開いた。
「今,お医者様とお話してきたんだけどね…」
微妙な空気が漂う。
「…え」
ただの風邪
そう信じていた。
でも,芽依美に告げられた病名は,あまりに残酷なものだった。
「HIV…?」
なにを言われているか…
一瞬わからなかった。