Heaven
面白そうに笑うのは弟の美月しかいない。
美月は俺より2つ下で、だけど見た目は俺より年上に見えるくらい、大人っぽい。
いつの間にか、俺の身長を抜かしていた。
バスケをしているからだろうか。
今の俺は美月を見上げる立場。
それくらいならまだ許せる。
でもそれだけじゃない。美月は、兄の俺から見てもかっこいいからだ。
小麦色の肌に、大きな瞳。
笑うとその瞳が少しだけ細くなって、白い歯が輝く。
中学二年生と思えないくらい、かっこいい弟がいる俺は複雑な心境。
美月と違って俺はかっこよくないし、モテる要素なんてないに等しい。
『うるせぇよ。ふられたから何だっつーの』
軽く舌打ちをして、椅子に座った。
美月も俺の前に座り、『別に』と言葉を並べる。
するとそんな曇った空気の中を裂いたのは母さんの一言だった。
『雅には雅のいいところがあるわよ。それを気づけなかった美加ちゃんが悪いのね』