Heaven


過去がまたひとつ増えていく。
時計の針がひとつ進むと過去がひとつ増える。
俺たちはそんな世界に住んでいるのだ。

でも美羽は、ひとつ進むことがとても苦痛だったんだ─…


先生がこれから始まる授業のことを話していく。それが終わり次は行事のこと。
そして全てを話し終えたのが、丁度11時になるころだった。

ヒカルとは一言も話していない。
回されるプリントを受け取る時も、俺は視線をずらしていたから。
極力、俺はヒカルを避けていたのだ。


そして先生が最後の挨拶をし、学校が終わった。続々と教室をあとにする生徒たち。
美羽はやはり帰るのが早く、気づいたときにはもう隣には居なかった。
また『ばいばい』と言えなかった。

でも今日言ったら軽率だろう。
だからいいんだ。

俺も帰ろうと思い、横に掛けてあったカバンを取る。


『雅…』


すると低い声が静かな教室に響き渡った。


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