Heaven
また、風が強くなる。
また、俺は言葉を失う。
死んだ。
陸は、もうここにはいないという事実を春から聞かされ、俺はただ何かに必死に耐えていた。
冗談だろ?なんて言える余裕などなかった。
俺の中の何かが崩れ落ちていく。
積み上げてきたものが。
美羽の涙の理由は、こういうことだったのか。
ようやく理解が出来た。
『し…死んだ?』
振り絞った声で春に確認をする。
春は下を向いたままピクリとも動かない。
風が、強い風が…
俺達を包み込む。
春の季節には少し寒い風だ。
『…美羽をこれ以上辛い思いさせないでくれ…』
下を向いたまま言う春。ふと下を見るとベンチの上に、水滴の痕がいくつかあった。
雨は、降っていない。
これは、春から零れ落ちた涙なのだ。
そんな春を見ていたら、俺の優しさが本当にちっぽけだと思った…
春は美羽を守っているのだ。