Heaven


俺はゆっくりと立ち上がり、春に『じゃあね』と告げて、美羽の思い出が詰まる、この公園から姿を消した。

力が入らない。
ただぼーっと歩く俺。

太陽が、太陽が…
いつもより歪んで見える。

違う、これは俺の瞳に涙が溜まっているからだ。それで太陽が、道が、街が、歪んで見えるのだ。

真っ青な空。
今も美羽は一人で泣いているのかな?


『なんで…なんで死ぬんだよ…』


必死で堪える涙は、
俺の行為を無視して、
ゆっくりと頬を伝う。

この問い掛けに答えはない。

もう、やめよう。
美羽の心を俺は癒せることは出来ない。

陸じゃないから。
ただ、陸に似ているという理由だけ。


ただ─…それだけ。


…珍しく、今日は道に迷わず帰ることが出来た。家に帰ると母さんの姿はない。
父さんは出張中で今日帰ってくるらしい。

体を引きずりながら、俺は階段を上っていく。

いつもより、二階が遠く感じた。


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