Heaven
~1.屋上の天使~
桜の花びらがピンク色に染めるこの季節。
俺は少しだけ大人になった。
大人への階段をひとつ上っただけだと思っていた。
だけど…心も大人へと変わるんだ。
『私…やっぱり雅と付き合えない…別れて?』
玄関先で無表情のまま俺に彼女がこう言った。
俺は訳も分からず、ただ唖然として彼女の美加《みか》を見ていた。
『は…い?』
春の心地よい風が俺たちの間を通り抜けていく。
その風はなにを意味しているの?
ふられた俺を笑ってるの?
それとも背中を押してくれているの?
意味が分からない。
俺…なにかした?
『…なんでですか?』
なぜか敬語になってしまう俺。
美加は一度も俺を見ずに、話を続けていく。
『無理なの…もう。雅とは付き合えない…ごめん』
こういうとき、どうしたらいいの?
涙さえも浮かべない美加は、どこかおかしくないか?