Heaven


そう思うと嬉しくなんかないよ…


俺は下を向いて、小さく微笑む。
複雑な心境だ。

いっそのこと、
もういなくなりたいよ。

5月中旬に最適な季節の中。
俺の心には靄が掛かっていた。
この靄は消えるのだろうか?


『…良かった…』


小さく呟き、涙を流す美羽。

陸はキミにとって偉大な人なんだね…
見ていて分かるよ…



『あのさ、美羽…』


でも繋がっていたいんだ。
キミと。
繋がって…いたい。


『なに?』


『これ、あげる』


ポケットから出したのは、先ほどヒカルが拾ってくれた一枚の写真だ。
美羽に持っていて欲しい。
いつでもいいから、これを見た時に俺のことを思い出して欲しい…


『これ…』


『いつも空ばっか見てるだろ?だからたまにはいいんじゃない?こういうのも』



俺は無理矢理、美羽に写真を渡して、くるりと後ろを向く。
そして出口へと向かう。

もう、ここに来ることはないだろう─…



その時─…俺は確かに聞いた。




『雅!!』


初めて呼んでくれたね。俺の名前を─…


『へ…?』



『ありがと!大事にするね』




…ねぇ…ここに…

また来てもいいかな?



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