Heaven
ねぇ、美羽…
俺達の距離が少し縮んだと思ってもいい?
込み上げてくる涙を必死に抑えて、俺は笑顔を作る。
今泣いてしまったら、
美羽が俺が去ったあと、泣けないだろ?
『初めて、呼んでくれたな…雅って』
『…そうね。呼びたくなったの。なんでかな…』
美羽が下を向いて小さく笑う。
その姿に、また心が揺れるのだ。
5月の気持ちのよい風が俺達を包む。
『…じゃあ、俺行くよ。ばいばい』
ドアノブに手を掛けて、右へと回す。
ガチャンという音と共に開くドア。
もっといたかったけど、涙が耐えれそうにない。俺は一歩踏み出して、もう一度美羽を見た。
美羽は俺を真っ直ぐ見つめて、一粒の涙を零した…
その涙が太陽に反射して…ゆっくりと落ちていく。
『ばいばい…』
いつも交わしている
《ばいばい》という言葉が、こんなにも悲しくて…切ない言葉だと…
俺は知るはずもなかった─…