Heaven


ドアのしまる音がいつまでも静かな校舎に響く。俺はドアに背中をつけて、声を殺して泣いた。
ただ名前を呼ばれただけなのに、どうしてこんなにも嬉しいのかな?


体に帯びていく熱い情熱。
体と裏腹に瞳から流れるのは冷たい液体だ。


愛しい、美羽が。
抱き締めたいと思った。湧き上がる欲情。

俺は涙を我慢するように、欲情まで我慢することは出来るだろうか?


『美羽…』


ほら、名前を呼ぶだけで幸せだと感じるよ…

キミを思うだけ…
愛情は深まるよ…


美羽は、どう思う?



階段をひとつ、ひとつ下りて行く俺。
向かった場所は保健室だ。
保健室には先生の姿はなかった。
外出中なのだろう。
俺はパイプイスに座り、ティッシュで涙を拭いた。

泣くのは、終わりにしよう。
だって今日はいい日だから。
泣き顔なんて似合わないだろ?


俺は涙で濡れたティッシュをごみ箱へとほかる。

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