Heaven


思い出になんかしたくないよ…

だってほら…
陸はいつもあたしを見守ってくれているでしょう?
この広い、広い空から…


中学時代、あたしと陸は、携帯電話という滑稽なものなんてなくて、
長い時間話すのには、このベランダが最適な場所なのだ。

でも、今となっては、
携帯電話が流行りだして、このベランダが滑稽なものと変わっている…。

あたしは陸とベランダで話すと約束し、家の中に入っていく。
今のあたしはきっと、口元が緩んでいるに違いない。

陸と話せる…
嬉しすぎる…。


寒くて凍えた体も、
今では暖かく感じる…

陸は不思議な力で、
あたしを虜にしていくの…。


『おかえり、寒かったでしょ?ご飯食べる?』


するとリビングからお母さんがやってくる。
あたしは一人っ子で、とても過保護にされている。

別に嫌ではないからいいけれど。


『ごめん!あとで食べる!』



今はそれどころじゃないから…


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