Heaven


このくらいの小さな願いくらい叶えてくれてもいいでしょ?


心の中で神様に訴える。

すると突然、陸の部屋のベランダのドアが開いた。
それと同時に聞こえる陸の声。

久しぶりに聞く陸の声が少しだけ低くなっていた。
声変わりでもしたのだろうか?
甘いボイス。
また彼の魅力に溺れるのだ。


『陸!毎日毎日電話しすぎよ!!』


陸のお母さんの怒鳴る声。


『うるせぇな!』


反抗する陸。
同時にドアが勢いよく閉まる音が聞こえた。
あたしは焦り、思わず下にしゃがんでしまう。

しゃがむと陸のベランダからは見えないからだ。
息を潜めて、陸の声に集中をする。
違う、酔いしれていたのだ。


でもあたしはまた涙を流すこととなる。

電話をしている相手が…あの子なんて…


あなたがあの子の名前を呼ぶ声が…


愛しいって思うの─…



『聞いてる?京子』




神様、あなたは意地悪すぎます…。


お願い、今日一晩だけ、
思い切り泣いてもいいですか─…?




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