Heaven


聞きたくなかったよ…
まさかあなたの口からあの子の名前を呼ぶなんて。

信じたくもなかった…

もう一度、昔に戻りたい…。
あの頃に。
ベランダで仲良く会話をするあたしたちに戻りたい。



あたしは声を殺して泣き続ける。



もうあなたには、
あたしの気持ちなんて…聞こえないのでしょう。


…次の日、学校へ行くと目が腫れているあたしを春が心配をしてくれた。春は昨日の噂が原因で泣いて、目が腫れたのだと思っているだろう。


それでいい。
本当のことなんて言えるはずがなかった。
また春は心配するだろうから。
これ以上迷惑をかけられない。


時はゆっくりと進み、
もう夏本番に差し掛かってくる。
外での部活は正直キツい。
ボールを追うのがしんどくて、嫌になる時も多々あった。


でもこのテニスコートからは、グラウンドが見やすい。

陸がよく見えるのだ。
リフティングをする陸の背中を、あたしはずっと見つめるの。




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